アルミ鋳造材と展伸材の比較
アルミニウムは鋳造材と展伸材に分けられます。
弊社で使用する鋳造材と展伸材との対比です。
よくご質問を受けますが、同じアルミ材料でも別のものと考えられるほうが良いと思います。
素材変更(鋳造材↔展伸材)される場合には、強度などの比較から検討するほうが良いと思います。
※参考 強度が強い方から並べると
強 A5182 > A5154 > A5086 > A5056 > AC4CH-T6 > A5052 > A5005 弱
一般的によく使用されるA5052の代わりにAC4CHの使用が可能です。
強度データ
■ 鋳物用アルミ合金の種類と特性
・合金の種類と特性
AC1A,AC1B(Al-Cu,Al-Cu-Mg系)
高強度だが鋳造性が悪く、耐食性も良くない。
架線用部品、自転車部品、航空機用油圧部品、電装部品などの高い強さを必要とする構造材に用いられる。
AC2A,AC2B(Al-Cu-Si系)
Al-Cu系の鋳造性を改善した合金で、流動性、被削性、溶接性が良好
AC2Aは自動車のシリンダ-ヘッド、マニホ-ルド、デフキャリア、ポンプボディ、足回り部品などに用いられる。
AC2Bはクランクケ-ス、バルブボディ、クラッチハウジングなどに用いられる。
AC3A(Al-Si系)
流動性が良く、薄肉で大型鋳物、形状が複雑な鋳物に用いられる。非熱処理型合金で、比較的強度が低く、機械的特質、被削性が劣るが、溶接性、耐食性は良い。
ケ-ス、カバ-、ハウジング類、カ-テンウォ-ルなどに用いられる。
AC4A,AC4C,AC4CH(Al-Si-Mg系) 弊社で使用している材料
Al-Si系合金に少量のMgを加えたもので、熱処理効果を与え、機械的性質と被削性を改善した合金。耐食性が良い。
AC4Aはミッションケ-ス、クランクケ-ス、ブレ-キドラム、ギヤボックスに用いられる。
AC4Cは油圧部品、ミッションケ-ス、フライホイ-ルハウジング、ブラケット、水冷シリンダ-ブロック、ハンドル、カ-テンウォ-ルなど非常に多くに用いられている。
AC4CHは自動車用ホイ-ル、架線金具、航空機用エンジンなどに用いられる。
AC4B(Al-Si-Cu系)
比較的高い強度を持ち、流動性、耐鋳造割れ性、被削性、溶接性が良好
クランクケ-ス、シリンダ-ヘッド、マニホ-ルド、航空機用電装部品などに広く用いられている。
AC4D(Al-Si-Mg-Cu系)
Al-Si系の熱処理硬化性を改善して、強度とじん性を高めた合金で、耐食性、耐熱性が良好
シリンダ-ヘッド、シリンダ-ブロック、クランクケ-ス、ギアハウジング、油圧部品などに用いられる。
AC5A(Al-Cu-Ni-Mg系)
高温での機械的性質が特に優れるほか、被削性が良好
シリンダ-ヘッド、シリンダ-ブロック、油圧部品などに用いられる。
AC7A(Al-Mg系)
特に耐食性に優れた合金で、強さ、伸び、じん性が良好。陽極酸化もしやすい。
食料用器具、化学用部品、住宅や建築物の装飾、事務機器、ドア金具などに用いられる。
AC8A,AC8B,AC8C(Al-Si-Cu-Ni-Mg系)
熱膨張係数が小さく、耐摩耗性に優れる。高温強さ、鋳造性が良好
ガソリン及びディ-ゼルエンジン用ピストン合金として多く用いられる。
AC9A,AC9B(Al-Si-Cu-Mg-Ni系)
熱膨張係数が最も小さく、耐摩耗性に優れる。高温強さ、硬さが良好
二輪車用空冷ピストンシリンダ、ディ-ゼルエンジン用ピストンなどに用いられる。
■ 展伸用アルミ合金の種類と特性
・合金の種類と特性
A1000系(純アルミニウム)
代表的なものは1050(純度99.5%以上)。 微量のFeとSiを特性に応じて調整したアルミニウムで、加工性、耐食性、溶接性、電気や熱の伝導性などにすぐれている。 ただし、強度が低いため反射性、耐食性、導電性などの特性を活用した反射板、装飾品、各種容器、送配電材、放熱材などに使用されている。
A2000系(Al-Cu系)
代表的なものはジュラルミンや超ジュラルミンの名称で知られる2017や2024合金でCu3.5~4.9%を含み、機械的性質や切削性にすぐれている。 なお、激しい腐食環境下で使用する場合は耐食性のよい純アルミニウム、またはアルミ合金板で被覆して用いることがある。 航空機材、輸送機材、機械部品その他構造用などに多用されている。
A3000系(Al-Mn系)
代表的なものは3003、3004合金(Mn1~1.5%後者はMgも0.8~1.3%含む)。 このシリーズの合金は、純アルミニウムの持つ耐食性を低下させずに強度を高くしたもの。 アルミ缶などの容器を始め、日用品、住宅外装など幅広い用途で利用されている。
A4000系(Al-Si系)
建築用パネルなどに用いられる4043(Si4.5~6%)があるが、この合金系は融点が低いという特徴を生かして溶加材やろう材として多用される。 なお鍛造ピストンなどに使用される4032合金(Si11~13.5%)は熱処理型の合金で、耐摩耗性の高い合金として活用される。
A5000系(Al-Si系)
マグネシウム含有量の少ないもの(Mg0.5~1.1%)は装飾材や器物材用に、また多いもの(Mg2.2~5%)は缶蓋材や各種の構造材として多用されている。 これらの合金は海水や工業地帯の環境に強いため、装飾性を除いた実用面からは、ふつう表面処理を施す必要はない。
A6000系(Al-Si系)
代表的なものは6061、6063合金(Mg0.45~0.9%、Si0.2~0.6%)。 6061合金は銅を微量添加して強度を高くしたもので、各種の構造材に用いられている。 6063合金はMg、Siの量が6061合金より強度は小さいが押出加工性にすぐれており、押出形材として建築用サッシなどに多量に使用されている。
A7000系(Al-Si系)
Al-Zn-Cu系の高力合金とAl-Zn-Mg系の溶接構造用合金の2系統がある。 Al-Zn-Mg-Cu系の7075合金(Zn5.1~6.1%、Mg2.1~2.9%、Cu1.2~2%)は超々ジュラルミンとして日本で開発されたもので、アルミ合金の中でも最高の強度を持ち、航空機関係のほか、スポーツ用具類や金型用などに利用されている。 また、Al-Zn-Cu系合金は、強度が比較的高く、熱処理可能な溶接構造用材として開発された合金で7003、7N01合金(Zn4~5%、Mg1~2%)が代表的なもの。 新幹線をはじめとする車両用構造材などの各種構造材として広く使用されている。
■ 代表的な鋳物用と展伸用アルミ合金の成分表(対比)
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